日本版モアイ像について

弁護士 松本 素彦

 神奈川県弁護士会36 期の同期旅行として、令和5年9月の中ころ、宮崎県を訪問しました。
私にとって宮崎県は日本での未踏県の一つであり、興味深く期待を持って出かけて行きました。
宮崎県の予備知識としては、かつての新婚旅行のメッカ、高天原神話の故郷といったところで、今回の旅行の中心も、天照大神が隠れたとされる天岩戸のある宮崎県北部の高千穂町が中心になるであろうと思っていました。
ところが初日、宮崎空港から国道220号線を太平洋沿いに南下して行くと、サンメッセ日南と言うところがありました。
ここで何とも不思議な光景を見ました。モアイ像です。

そもそもモアイ像とは、南太平洋チリ領イースター島に多数存在していた人の顔の石造彫刻のことです。
なぜこれが日本の宮崎県にあるのかというと、説明によれば、1988年、あるテレビ局がモアイ像を紹介し、昔の部族間の争いと、チリ大地震で倒壊したモアイ像を放映して、この世界の文化財の修復こそ日本の役割ではないかと訴えたそうであります。
これに日本の企業が協力し、倒壊していたモアイ像を修復し、これを評価したイースター島の長老会は、世界で初めてモアイ像を日本で復刻する事の許可をしたとのことでした。
そして、その建設地として選ばれたのが宮崎県サンメッセ日南の場所で、1996年、日本版モアイ像の完成と同時に、サンメッセ日南がオープンしたとのことです。

ただ、この時代に、こうした石像を作る意味がどこにあるのだろうかと考えました。
解説によれば、モアイの「モ」は現地語で「未来」、「アイ」は「生存(生きる)」という意味で、「モアイ」という言葉に「未来に生きる」との意味が込められているとのことでした。少なからず胸を打たれました。
人生も高齢の域に達し、未来に対する希望にかげりが見え始めている今日この頃、「貴方にも希望があるのだ」「未来を見つめ、明るく生きていくように」との強いメッセージが天から降ってきたような感覚を覚えました。

さらに中腹まで歩くと、「恋人の丘」という場所があり、2体の別のモアイ像が置かれていました。これらは「最愛(モアイ)」と呼ばれており、公募で名付けられたとの説明がありました。

結局、このテーマパークで見たモアイ像は、「未来に生きる」「最愛」という人間にとっての最高の価値を象徴しているとも思い、良い場所を訪問したと感激しました。
翌日は、宮崎県の北部に移動し、天岩戸や高千穂の夜神楽を見学し堪能しました。
お陰様で有意義な同期旅行となりました。

以上