薬害C型肝炎問題

菊池 博愛 (弁護士)

 私は薬害肝炎東京弁護団に所属しています。
薬害C型肝炎とは、血液を原料として作られる薬剤(血液製剤)にC型肝炎ウイルスが混入していたため、多くの方がC型肝炎ウイルスに感染してしまったというもので大きな社会問題となっています。

 薬害C型肝炎で問題となっている血液製剤は血液の中に含まれている血液を固める成分(血液凝固因子)を利用して止血剤として作られたもので、主に出産時の出血の際や血友病患者に使われてきました。

 これらの血液製剤は数千人から2万人以上もの供血者による血漿をプールしたものから作られていたため、供血者の中に1人でもウイルス感染者がいるとプール血漿全体が汚染されてしまう危険性がありました。このことは1960年代から指摘されており、1977年にはアメリカのFDA(食品医薬品局)がフィブリノゲン製剤の承認を取り消しました。しかし、日本ではフィブリノゲン製剤は1964年から1988年ころまで販売されておりました。

 そのため、多くの方にこれらの血液製剤を介してC型肝炎ウイルスが感染することとなってしまったのです。

 弁護団は2002年にこれらの薬を作った製薬会社と認可をした国を相手に訴訟を起こしました。

 その後、国は2008年1月に薬害肝炎救済法を成立させ、特定の血液製剤を投与されてC型肝炎ウイルスに感染してしまった患者は、その症状の程度に応じて給付金を受けられることになりました。

 この法律は5年間の時限立法であり2013年1月には期限が切れることになっていましたが、2012年9月にあと5年間延長することを内容とする法律が成立しました。衆議院の解散が近いのではないかと言われておりましたので延長法案の成立が間に合い、ほっとしているところです。

 もっとも、今の法律では特定の製剤を使われた患者しか救済されない点、カルテが保存されていないなど資料がない患者は救済が難しい点などまだまだ問題点があります。また、C型肝炎ウイルスに感染しても人によっては症状が現れるまでに時間がかかることから、自分がウイルスに感染していることを認識していない患者が多数いるのではないかということも指摘されています。

 もしC型肝炎ウイルスに感染していることがわかった場合、感染ルートはいろいろありますが、念のため特定血液製剤を投与されたことがないかどうか、特に手術を受け止血剤を投与された経験のある方は、手術を受けた医療機関に問い合わせをして確かめてみることをおすすめします。