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川崎における成年後見制度の運用状況について

本田 正男 (弁護士)

 今回は,成年後見制度の川崎における運用状況についてご報告したいと思います。

 ご案内のように,急速な高齢化社会への移行を背景に,高齢者の方々の生活設計やその財産管理の問題が日本の社会全体を覆う深刻で緊急の課題となってきています(平均的にいって,やはり年配の方の方が貯蓄の指向性が高く,したがってまた,適正な財産管理の必要性も高いように思われます。)。 このような事態に呼応して,認知症等により自らの財産を管理する能力を失われた高齢者の方々の法的問題を扱う成年後見開始申立事件,保佐開始申立事件の件数は,全国的にも,現在裁判所においてもっとも申立事件数の急増している事件類型となっています。 加えて,後見等の事件の場合には,被後見人等の方が亡くなられるまで,事件は続きますから,通常なら1年程度,どんなに長くとも数年以内には最終的な判断(判決)の下される一般の訴訟事件と異なって,延々事件は終わらず,裁判所では,昨年受け付けた事件の上に,そのまま今年受け付けた事件が加わり,日々累積していく事件の管理監督に追われているというのが実態です。

 このような文字通り未曾有の事態と呼んでなんら差し支えのないような事件数の激増に対して,全国の家庭裁判所においても,運用上の改善や検討が日々行なわれているところです。 そのような取組みの中で,これまでも,鑑定の簡略化や,参与員の活用など,種々の試みが行なわれていますが,特に, ①紛争性の高い事件等において,当事者の身内以外の第三者を後見人として選任する類型の事件に対応するための第三者後見人の候補者の確保や, ②一旦選任した後見人の適正な業務遂行を担保するための実効性ある負担の少ない監督方法の検討といった問題は,いずれも避けて通れない課題になっています。

 この点,弁護士会川崎支部においては,平成14年当時激増していた破産申立事件に対処するため,裁判所と弁護士の有志との間で定期的な意見交換会を立ち上げ,管財事件を中心とした破産事件や民事再生事件の様々な手続きの上の運用改善を行なってきた経験と実績を踏まえ,平成17年4月に開催された支部の定時総会において,家裁支部との懇談会の開催を目的として弁護士会支部内に委員会を設置し,その後準備作業を進め,同年6月から,「成年後見財産管理人意見交換会」という形態で,家事事件のうち,成年後見事件や,相続財産管理人,不在者管理人など裁判所と共同して作業を進められる類型の事件について,(破産管財業務の意見交換会同様に,)裁判所と定期的に意見交換を行い,事件処理上の改善方策などについて連携を図ってきました(現在川崎支部では,奇数月には後見業務等について家裁と,偶数月には管財業務等について地裁と,それぞれ,2か月に1度の頻度で,裁判所の会議室をお借りして意見交換会が開催され,裁判所からは支部長を始め担当裁判官や担当の書記官調査官の方にもご参加を頂き,弁護士会からも50期代の若手を中心に毎回20名を超える弁護士の参加を得て活発な討論が継続しています。 成年後見の意見交換会も,この原稿を書いている平成20年5月の時点ですでに17回を数えるまでに至りました。)。 このように緊密に,また率直な意見の交換や発想をぶつけ合う中で,共に,司法の一翼を担う者として,相互に信頼関係を構築し,また,何よりも,市民社会の要求を伝え合い,少しなりとも,その要求に応えるための努力を重ね,前述の①・②のような課題に対し,現実に一定の成果を生み出すことができたように思います。

 また,この間の川崎における成年後見制度の運用として是非触れておかなければならないことは,行政の取組みです。 川崎市では,(特に,平成17年以降)市長の申立によって成年後見事件の開始される件数が飛躍的に増加し,また,(この首長申立の場合に限らず,)第三者成年後見人をつけるための費用を,市が予算として確保し,いわば身寄りのない,さらに言えば,後見人の費用をまかなうだけの資力に乏しいお年寄りに対しても,行政が一定程度手を差し伸べているのです。 特に,昨年からは,上記のような首長申立の事案の急増に対応するため,市が主導して,裁判所や弁護士会等の各士業,さらに,市の社会福祉協議会の担当者も参加して,「川崎市成年後見制度連絡会」が設立され,前述の意見交換会同様,関係機関同士の継続的な連絡協議の場が設けられることになり,すでにこれまで3回の会合が重ねられました。 私も弁護士会の担当としてこの連絡会に毎回出席させていただいていますが,今後この連絡会が川崎の市民にとって真に有用な組織として機能することができるよう,弁護士としての役割立場を踏まえながら,積極的に係わって行きたいと思っています。

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