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新型インフルエンザと「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」

熊谷 靖夫 (弁護士)

 今年の4月より,川崎市感染症診査協議会の委員を務めさせて頂いております。感染症診査協議会とは,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づいて,法で指定された感染症患者等に対して就業制限や入院勧告などがとられる場合に,その手続についてチェックする機関です。

 今年の5月ころから,日本国内でも新型インフルエンザ(H1N1型)が広まりはじめております。新型インフルエンザも「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で指定されております(法6条第7項)。新型インフルエンザにかかると(かかったと思われると)どのような手続があるのか簡単に紹介します。

 都道県知事あるいは政令市市長は,まん延を防止するため必要があると認められる場合,その必要性に応じて,

① 新型インフルエンザにかかっていると正当に疑われる人に対して,潜伏期間などを考慮した一定の期間,体温やその他の健康状態について報告を求めることができます(法44条の3第1項)。

② ①に該当する人に対して,報告だけでなく外出しないことを求めることもできます(法44条の3第2項)。

③ 新型インフルエンザの疑似症が現れた人,かかったことが明らかになった人に対しては,一定の職種への従事を禁止することができます(法18条第2項)。

④ 新型インフルエンザの疑似症が現れた人,かかったことが明らかになった人に対しては,入院を勧告することができます(法19条第1項)

⑤ ④の勧告に従わなかった場合には,強制的に入院させることができます(法19条第3項)。

⑥ ④の勧告に基づく入院あるいは⑤に基づく入院は72時間を超えてはいけません(法19条第4項)。しかし,さらに入院の継続が必要と考えられる場合には10日以内の期間を定めて入院を勧告することができ(法20条第1項),この勧告に従わない場合には,強制的に入院させることができます(法20条第2項)。

⑦ 法20条第1項,第2項に基づく入院をしている人に対して,さらに入院の継続が必要と考えられる場合には,10日以内の期間を定めて入院期間を延長することができます(法20条第4項)。

このように新型インフルエンザにかかると,いろいろと社会生活をおくるにあたり不便になってしまいます。しかし,今広まりはじめた新型インフルエンザにかかるとこれから先ずっと就業制限や入院勧告を受けるものとは限りません。なぜならば,今後の状況によっては就業制限や入院勧告等をすることがまん延防止のために必要とは必ずしも言えなくなる可能性があるからです。

 感染症のまん延予防と患者さんの人権の尊重に配慮しながら,感染症診査協議会の委員を務めて行きたいと思っております。

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