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被害者参加制度について

大橋 賢也 (弁護士)

1 平成16年12月1日に成立し,同17年4月1日施行された犯罪被害者等基本法18条を受け,被害者がさらに刑事手続きに直接関与することのできる制度として,犯罪被害者参加制度が創設されました。参加を希望する被害者等は,担当の検察官にその旨を申し出て裁判所の許可を求め,裁判所から参加を許可されると「被害者参加人」と呼ばれ,裁判所の許可等の下,公判期日への出席,事実および法律の適用について意見陳述をすること等ができることになりました。

2 私は,本年2月,準強制わいせつ罪で横浜地方裁判所川崎支部に起訴された事件の国選弁護を担当しましたが,この事件で被害者参加制度が適用されました。当該事件が,川崎で最初の被害者参加制度適用事件でしたので,公判前に裁判所,検察庁,弁護人の三者で打ち合わせを行い,公判期日を迎えました。

3 私が,この事件を通して感じた被害者参加制度の長所と今後の課題は次のようなものでした。

(1) まず,長所についてですが,

① 従来刑事裁判に直接参加することが認められてこなかった被害者が,公判廷で被害者感情を吐露することで,裁判所に理解してもらい,その結果被害者救済に繋がる。裁判所も単に調書を読むだけの場合に比べて,より被害者感情を理解することができる。

② ①の結果,被告人も自分が被害者に対して行った行為と結果を真摯に理解し,より反省を深めることができる。それにとどまらず,再犯可能性を低く抑えることが期待できる。

 というものです。

(2)これに対し,今後の課題についてですが,

① 長所①の反面として,罪刑均衡の点で問題が生じうるのではないか。つまり,被害者参加人は,公判廷において,被害者感情を直接裁判所や被告人に対して聞かせることができるため,特に,裁判員裁判適用事件において厳罰化の流れを加速させる危険性があるのではないか。

② 同じく長所①の反面として,被害者参加人が第2次被害を受ける危険性がある。法廷では遮蔽措置が執られているとはいえ,被告人の存在を間近に感じながら事件の記憶を思い出さざるを得なかったり,場合によっては被告人から暴言等を受ける危険性もあるため。

③ 被害者参加人に被告人に対する質問事項には特段制限がないことから,否認事件の場合に問題が生じる可能性がある。

④ 重複質問等の影響により,1回当たりの公判の時間が長くなる傾向がある。

 というものです。

4 以上,1回の事件で感じた雑多な感想を述べましたが,まだ始まったばかりの制度ですので,それぞれが手探りの状態にあるといえます。ただ,被害者参加人が,被害者感情を法廷で吐露し裁判所に伝えることができる,被告人に理解させることができるという同制度の長所を最大限生かすために,今後生じうる様々な問題点にも前向きに取り組んでいくことが大切だと感じました。

以上
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