川崎総合法律事務所

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家事調停官の仕事

菊池 博愛 (弁護士)

 私は昨年の10月から横浜家庭裁判所の家事調停官という仕事をしています。

 家事調停官は弁護士5年以上の経験のある者が弁護士資格を有したまま非常勤として家庭裁判所の裁判官の職務を行うものです。いわゆる非常勤裁判官と呼ばれているものですが,非常勤裁判官には家庭裁判所の家事調停官の他に簡易裁判所の民事調停官というものもあります。

 非常勤裁判官の制度が設けられたのは,裁判所の行っている業務に弁護士的な発想を取り入れるという趣旨と弁護士に裁判官の仕事を知ってもらい裁判官に任官したいという希望者を増やし弁護士任官を促進するという2つの趣旨があるようです。

 私が務めている家事調停官の法律上の役割としては,主に2人の調停委員とともに調停委員会を構成し家事調停(離婚,遺産分割,養育費請求など)を主宰することにあるのですが,家事調停官の場合には家事審判法23条,24条の審判をすることもできます(いわゆる乙類審判はできません。)。今のところ審判をする機会には恵まれていませんが,せっかくですから任期の間に1度くらい自分の名前の入った審判書を作ってみたいと思っています。

 私の家事調停官としての1日は朝9時30分に横浜家庭裁判所に出勤するところから始まります。登庁するとまず最初に登庁簿に印を押します。普段弁護士の仕事をしていると出勤簿はもちろんタイムカードすらありませんので,登庁簿に印を押すという行為が何か厳かな儀式というか「今日は裁判官なのだ」という気持ちにしてくれます。

 調停は午前10時からの枠と午後1時15分からの枠があるのですが(午後3時30分からの枠がある場合もあります),午前と午後でそれぞれ6~8件くらいずつを担当しています。私の場合(ほとんどの家事調停官がそうだとは思いますが),その日に担当する調停のどれかには同席するようにしています。常勤の裁判官(家事審判官)は担当している調停の数も比較にならないほど多く,調停の他に審判事件なども担当していますのでなかなか一つの調停に集中して同席する時間はとれないようですが,家事調停官の場合には時間に余裕もありますので,1つの調停に集中するということができるのです。

 執務時間中の大部分は調停の立ち会いと調停委員との評議ですが,調停の合間合間に来週の調停の記録に目を通したり,書記官や調査官と事件の具体的な進行について相談することもあります。

 弁護士としては関わったことのないような事件も豊富にあるので毎回驚きの連続です。

 このようにして午後5時の退庁時刻はあっという間にやってきます。もっとも,その日の調停で離婚が成立している事件がある場合には10日以内に戸籍の届出が必要な関係で調停調書をその日のうちに作成しなければなりません。そのため,書記官が遅くまで残って調書を作成してくださり,調書の決裁を済ませてから退庁となりますので午後5時に帰れることはほとんどありません。

 週に1度の家事調停官の執務ですが,この日は普段の弁護士業務とは異なった充実感があります。また,普段話す機会のあまりない裁判官や書記官など裁判所の職員と気軽に話すことができるので毎週楽しみにしています。

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