川崎総合法律事務所

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将棋の効用

高柳 馨 (弁護士)

  私は,自分の執務室に日本将棋連盟の5段認定の免状額を掲げています。平成19年2月のもので、当時の米長邦雄会長、森内俊之名人、渡辺明竜王の毛筆による直筆署名入りのものです。縦40センチ、横75センチというかなり大きなもので,目立つところに掲げておりますので,私の部屋に入った多くの人はこの額を眺め、将棋の話題に花が咲くことも珍しくありません。何しろ5段の免状ですから、皆さん,私が相当に将棋が強い(=頭が良い)と理解(誤解?)し,免状料はやや髙かったのですが,十分に元を取ることができました。実際は,将棋の免状は、プロ棋士の推薦があり、免状料を支払えばどなたでももらえます。私は、飯塚祐紀プロ7段に長らく教えていただいており、飯塚7段のご推薦で免状をいただきました。
 最近,藤井聡太4段の登場で、大きな将棋ブームが起きています。14歳の藤井4段が、プロ入り直後から先輩のプロ棋士を次々になぎ倒し前人未踏の29連勝を成し遂げたことはNHKニュースでも大きく取り扱われ,まず,知らない人はおりません。また,ちょっと前に,三浦弘行9段が,対局中にコンピューターソフトを利用したのではないかと疑惑を持たれ,前代未聞の出場停止になった(その結果,竜王戦の挑戦権を失った)ことも大きく報道されました。三浦9段の疑惑は晴れましたが,この事件以後,対局場にスマホやパソコンを持ち込むことが禁止されるようになりました。このような現象は,AI(人工知能)の進歩によりコンピューターソフトの将棋力が人間を超えたことから起きております。平成29年5月に佐藤天彦名人がコンピューターソフトPONANZAに2連敗してからは,それまで行われていたプロ棋士とコンピューター将棋ソフトの対局は行われなくなりました。結果はほぼ明らかだから対局の興味がそがれてしまったということでしょう。
 将棋の魅力は無限とも言える指し手の広さにあります。戦後,プロの公式戦だけでも何万局も指されておりますが,初めから終わりまで同じ指し手というのは一局もないと言われております。最近は,コンピューターソフトの進歩で,これまで定跡と言われていた指し手が見直され,指し手の可能性がぐんと広がりました。そのせいか,最近のNHKの将棋対局(毎週日曜日放送)を見ていると,「えー、こんな指し手があるの?」「元名人がこんなに簡単に負けてしまうとは」などと驚くことが多く,老化しかかった私の頭にも喝が入ります。そこで,番組を見た後,今見た手を試してみようと,コンピューターソフトと対局,しかし,何度挑戦しても勝てず,「トホホ」ということもあります。こんなときは,ソフトのレベルをぐっと下げると,快勝に次ぐ快勝,ストレス発散となります。昨今,認知症対策が大きな課題となっております。認知症は,頭の柔軟性が失われ,固定観念にとらわれることから起きるのではないでしょうか。将棋は,固定観念を打破し,柔軟な頭の使い方を求めます。将棋ソフトの進歩により,初心者は初心者なりに,有段者は有段者なりに,将棋を様々な角度から楽しめるようになりました。将棋を楽しむことこそ,認知症対策の決めての「一手」となると思います。

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